46歳の家族も仕事も失うおっさんが、16歳の自分に転生する、、というお話し。昨晩、一気読みして、面白いというより、むしろ懐かしいと感じた。タイトルのハイポジというのは、カセットテープのことで、ノーマルのテープよりも音質の良い上等なテープで、もちろん高かった。1986年当時、CDラジカセがあったのか、自分の記憶では定かでない、というか誰も持ってなかった。カセットテープにしてもCDにしても、もう遠い過去の異物になろうとしている。
 1986年当時、自分は17歳。3月生まれの早行きなので、その年の3月に高校を卒業している。この作品の主人公のおっさんとは、ほぼ同世代である。だから、時代的なものに対するシンパシーは持てたが、高校時代の生き様というか暮らしぶりというか、その部分はまったく違ってて、「そんな奴、おったんかなー」という感じだった。
 この作品、恋愛ジャンルであるが、まず自分が中高生時代に、あんな風な恋愛しとった奴が居なかった。自分の立ち位置が、『赤灯えれじい』のサトシに近いものがあったので、自分にそういう話しがなかったのはもちろんのこと、周りでもそんな話しを聞いた事がない。隠れて付き合ってた奴がいたかもしれんが、そういうのは大抵、なんらかの風の頼りで伝わってくるものだが、自分が知る限り、そんなのはこれっぽちもなかった。「不純異性交遊」というのは不良がするもので、不純であろうが純であろうが、色恋沙汰というのは、大抵は高校卒業してからの話し、という感じだった。
 家族的な面で言えば、ウチの親は厳しくて、バイトやったり朝帰りなどやろうものなら、どんな目に遭わされてたか分からない。一度、新聞配達のバイトやろうとして(当時、ウチの地元ではその程度しかバイトがなかった)、オカンから「何考えとんじゃ!学生の本分は何や、言うてみぃ!」と怒鳴りつけられて、当然禁止。言うなれば経済封鎖を受けてた様なものなので、ハイポジを買うのは並々ならぬ、という感じだったのだ。
 恋愛に関して言えば、自分はどっちかと言えば、30歳まで「中年童貞」の流れであったけど、ある時、おそらく神の啓示を受けたのだろう、一念発起して自分を変える事にした。以来、18年間、営々と色んな事があったのだが、そこで思うのは、「この手のチャレンジは、早ければ早いほど有利だし猶予があるなぁ」という事だった。まぁ、人生なんてのは、過去に思いを馳せても、意味のないものである。自分がどう生きたか、それだけが意味を持つ。「あの時、こうしとけばなー」と思う話しは良くあるが、環境や条件やその時の自分の意気地や、様々な要素で「そう出来なかった」だけの事である。
 むしろ、そんな風に思ったりするのは、一所懸命頑張ってなかった時の事だったりするのかもしれない。その意味で、自分があまり過去に戻りたいと思わないのは、頑張ってなかった時は不如意であるからわざわざ戻りたいとは思わないし、頑張ってた時はその事自体で満足であるからやり直す必要を感じない、という事なんだろうと思う。