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 ブロスというオンロードバイクに乗ってたのが悪いのか、野宿地探す才覚がなかったのか(確実に後者に帰因)、とにかく野宿ライダーになりそびれた後に知ったのがこの本。なるほど、歩きならパンクや故障の心配もなく、どこでも入り込めると考えた訳だ。
 「教書」というだけあって、内容は前半がアメリカ人イラストレーターによるマニュアル、後半が日本人による解説になっている。刊行された1982年にあっては画期的だったのは、マニュアル部が漫画(かなりアメリカ〜ンな絵柄だが)になっている事だ。バックパッキングは元々は平原を主とするアメリカの自然から生まれた関係で、山だらけ街だらけの日本の国情には合わない部分がある、と言われる訳だが、この本ではまずは前半でアメリカ本場のバックパッキングのあり方をマンガで解りやすく紹介し、後半で日本の国情に合った実践の仕方を紹介している。つまり、直輸入だったバックパッキングをジャパンテイストに変換しようと試みているのがこの本だと思う訳だ。
 この本が偉大なのは、ただ単にノウハウを語っているだけに止まらず、「思想」も語っている事だ。「バックパッキングとは、何を持っていかという策略である」「荷物は軽く少なく、だが快適さや安全は退廃というこではない」こうした箴言は時代を超えて共通するテーマであり続けると思う。
 この本を手にしたのは、確か1995年ころである。紹介されているアイテムの多くはモデルチェンジしているか製造終了していて、その意味では時代を感じさせられた。でも、今でも本屋で売られている事からも判る様に、普遍的な思想の部分は古くなるどころか、アウトドアやバックパッキングという言葉が社会に浸透し、元々の意味や意義がよく判らなくなっている今だからこそ、かえって新鮮さを増している様な気がする。