阿部真大の『搾取される若者達ーバイク便ライダーは見た!』(集英社親書)を買ったのはちょっと前の事なのだが、最近流行の格差社会本の中では異色ともいえる「バイク便」の世界を題材のしていたので興味を引いたのだ。というか、実はあまりに収入が悪いので、バイク便のバイトでもやろうかなーと思ってた矢先にこの本を見つけたのだ。読んだ結果、「やっぱりやーめた」と思わせたのが、この本の第一の功績である。
ただ、この本を読んだ感想としては、この本の帯に書かれている「広がる不安定雇用と新たな搾取の実態」というところまでは、バイク便の世界を描き切れてないんじゃないか、と思った。というか、バイク便の世界ってのは、「働けども貧しい」という様な世界なのだろうか(これはバイク便が食える商売で彼女の親に結婚申し込んでもNoと言われない、という意味でなくて、いわゆるワーキングプアというところまで行ってる風に描ききられていないという意味)。この本を見る限りはそうは見えないのである。自分の様に、クビ切られて3年も闘って、僅かな解決金で職場復帰もならず、手に職がありながら歳食ってるせいで再就職もままならず、で、結局バイク便の世界に流れた、という様な話しであれば、再出発不能の格差社会のある部分を描いた本になったかもしれない。しかしこの本は、バイク便の世界と文化、そこにいる人達の特徴を描いた本であって、バイク便という仕事が搾取構造になっているところまでは描けてない。どっちかというと、好きな人が好きな仕事をしている、という風にしか見えないのだ。
ただ、この本の本当の狙いは、好きな仕事に没頭するワーカホリックとそれを非人間的に利用する経営=資本家の関係において、労働者がすり潰されていく恐怖と現実を描いているし、それらはホワイトカラー・エグゼンプションや過労死といった、格差社会のもう一つの特徴の部分の性質である。この本は、バイク便の世界を題材に、もともと好きだった仕事が次第に責め具になるさまを描き、その陥穽に陥らぬよう警告を発しているのだ。面白いな、と思ったのは、多くの格差本が格差をまるで自然現象のように、「やむを得ぬもの、その流れの中でどう生きるか」というテーマで書かれているのに対して、この本では最後に労働組合の存在を示し、団結こそが状況打開の手段である事を示唆している。
この本は、そうした社会学の側面もさる事ながら、バイク便の世界のでバイクやバイクの乗り方の「格好良さ」の基準も紹介されていて、とても楽しかった。実際、自分もXRに乗っている訳だが、確かにカウル付きのオンロードバイクよりもすり抜けはしやすいのである(笑)
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