(NHKスペシャル 2020年11月29日放送)

 たった今、見終わった。この手の番組を見る度に、「自分がただただ運が良かった」と思う。実際そうだと思う。人並みな努力なら、大抵の人はやっている。やっていてなお、運に見放された人らが、いきつく先がホームレスだのひきこもりだの、その果ての孤独死だと思う。なんの為に生まれて来たか分からん人生とその終わりである。
 自分を育てた親の世代は、戦後の貧乏から高度成長期に向かう「努力が報われる時代」の人たちだったし、さらにその前の世代は閉塞した世の中を否応なく戦争で戦った世代である。ともあれ、頑張らなどうにもならんかった時代、頑張らん奴は放っておくしかない時代、そういう時代を生き抜いた人たちからみたら、ひきこもりなどというのは、落伍者以下の自堕落者でしかない。自分もその様に言われて育てられて来た。だから、嫌な事からは逃げたらいかんと思うし、嫌な事でも辛抱してやらないかんと思ってはいる。
 しかし、その一方で、自分だってうっかり間違えば、ああなっていたかもしれないのだ、という思いが強い。失業したり、解雇されたり、争議闘ったり、また無職になったり、適応障害になったり、そうしたピンチは自叙伝が書けるくらいある。そのどれかが、ホームレスだのひきこもりだののキッカケになったとしても、全く不思議はなかった。そうならなかったのは、なるほど努力だの頑張りだの、諦めないだの嫌な事から逃げないだの、そうした自助もあったかもしれないが、やっぱりそれだけではない、運があったからこそだと思う。運が良かったのだ。
 「失業というのは、ただ単に生活の糧を失うのみならず、社会から必要とされてないという思いこそが打撃なのだ」と誰かが書いてたが、この番組が描いていたのは、まさにその事だったのだろうと思う。自分の場合、無職の時であれ、争議の時であれ、誰かしらとの繋がりがあり、またそれを断ち切るほどに追い詰められなかった。それが、この番組に出て来た人らと、自分の決定的な違いだったんだろうと思う。
 ただ、一つだけ言えるのは、落ち込んで縮こまってる人というのは、助けようという人もあまりいなければ、チャンスも掴み難い。前向き、というのも、極めて重要な要素なのである。自分には、運、人との繋がりの前に、それがあったのかもしれない。

2020-11-29 21.53.25-1