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 日本軍の格好でキャンプするという、年甲斐もない事をやる事になったのだが、これがどうしてどうして、いろいろ勉強したり考えたりしなければならない事が意外にあった。おそらくこれからも出てくると思うのだが、既に勉強した事を列挙しておこう。
 まず、飯盒を塗り直したのだが、これがそこらのホームセンターで売ってるスプレーではなかなか再現が難しかった。日本陸軍をイメージするカラーと言えばカーキ色なのだが、一口にカーキ色といっても赤みがかったのから緑がかったのまで千差万別。その上、物の程度によっても色が違ったりで、どれが正解か分からん様になってくる始末。結局、見本の写真に出来るだけ近くなる様に、2色の色を薄く重ね吹きしたのであるが、それにしたって正解にはほど遠かった。結論からすれば、プラモデル用の日本軍のカーキを使った方が一番再現性が高かったのではないか、と思う。ちなみに、昔の陸軍が編纂した「被服手入保存法」に出てくる飯盒及水筒塗換法によると、「塗換に使用する茶褐漆…生漆百三十五匁、三輿朱粉三十匁、石黄百匁」の量目で塗料を混ぜると、日本陸軍の飯盒や水筒の色になるらしい。漆は分かるし、石黄ってもwikiに出てたが、三輿朱粉というのは分からなかった。ちなみに、スプレーではなく刷毛塗りだった様である。
 次に水筒。飯盒の方は今でも昔のロ号飯盒と同じ物が兵式飯盒として売られているが、水筒はすっかり廃れて同形の物はない。当時の物はオークションなどで手に入るが、さすがに70年以上も前のものを使う気になれない。そこでレプリカを買った訳だが、一口に昭五式(九四式)水筒といっても、年代によって様々なタイプがあり、しかもパーツが混同されてたりで、これまたどれが正解か分からん様な状態だった。でも、これは逃げ道にもなる話で、結局初期のタイプに似せたコルクの栓を作る事が出来た。
 個人用の照明器具についても調べてみた。個々の兵隊レベルでは提灯とかロウソクなんだろうな、と思っていたのだが、一応は懐中電灯とか発電式のライトもあったらしい。自分が興味を持ったのは、手提げの角形ランプで、これが実はあの松下電器がナショナルの商標を初めて使った製品で、かつ爆発的に売れた商品だという事を初めて知った。なおかつ、これは元は自転車の前照灯で手持ちとしても使える2ウェイライトで、類似品もいっぱいあったらしい。もっとも、このスタイルのライトも今は廃れてしまって、わずかにサンヨーの廃盤品を手に入れるのが精一杯だった。
 靴の問題日常生活にも影響あるのだが、特に軍装に関しては米軍以外ではサイズがないのが実情である。レプリカの編上靴も28cmまでで、かつオーダーメイドは無さそうである。そこで目を付けたのが陸軍でも使っていたという地下足袋だ。といっても、軍が採用してた地下足袋は底が黒で3枚コハゼの物である、という事が分かった。幸いにも、それに近い物は今でも作られていて、ワークショップなどには無いものの、通販で取り寄せが可能である。しかし、ミリコスでまさか地下足袋を履く事になるとは思ってなかった。しっかりした靴しか履いてこなかったので、プロテクションに少し不安があるが、最近では登山でも使っている人が多い由である。

 まぁ、こうした事はマニアや研究家の人はよく知ってる事なんだと思うが、戦記や戦争映画でしか日本軍を知らない自分にとっては、軍装の研究というより当時の技術や世相の研究に近い感覚がした。自分はこれまで、現用の装備しか扱った事がなかったのでこうした感覚は新鮮である。言ってみれば古物の探求ではなかろうか?