ジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌』の中で、共和国軍とファシスト軍がハンドスピーカーでプロパガンダ合戦を繰り広げるシーンがある。ありもしないパンに、ありもしないバターを塗って、これからオレ達はパンを食うところだぜ、と言った内容のもの。それを聞いたオーウェルが、どっちの陣営にもパンもバターもないのが判っていながら、思わずヨダレを垂らす下りがある。
 あまりに腹がすくので、携帯でグーグルのイメージ検索でジャム&マーガリンを検索した。出て来た画像を見て、思わず(本当に)ヨダレが垂れた。


 今日の午前に点滴が外れ、水気の物を口にするのがOKになった。腕が自由になった途端、歩くのも座るのも自在になって、肩や腰の痛みが吹っ飛んだ。
 昼から出た食事は、予想してた通りだったが、重湯だった。正確には、重湯、牛乳、アップルジュース(夜はオレンジ)各々約200cc。たったこれだけだが、飲み下すと腹に溜まる感じがして、空腹が和らいだ。お茶は好きなだけ飲める様だが、下腹が常時グルグル言っていて、気を抜くとビチビチを噴射してしまいそうな気がするので、チビチビとしか飲んでない。それでも、口をゆすぐしか出来なかったのに比べると、はるかに有り難い。
 家族の勧めで頭痛と眼圧の検査も受ける事にしたら、検査日が来週になってしまった。退院してたらふく飯盒メシを食うのは当分先になりそうだ。


 繰り返しになるが、「まさか」この時期、このタイミングで入院になるとは想像もしてなかった。色んな人から精密検査を受ける様に言われてたが、ほとんど聞き流していたのだ。こうにでもならなかったら、検査など受けなかっただろう。
 不思議なのは、昨日までピンピンしてたのが、明くる日にのたうち回って、救急車で運ばれる事態だ。しかも帰省中にである。もし、これが東京で起こってたなら、大変な事だった。誰が身の回りの事をしてくれた?ネコの世話は?それ以前に、誰がオレの危急を実家に伝えたか?様々な意味で、今回のダウンはラッキーな条件でのダウンだったのだ。
 昨日も引用したオーウェルの『カタロニア讃歌』では、オーウェル自身が敵弾に倒れ、野戦病院に入院する下りがある。そのおぞましい光景もさる事ながら、言葉も満足に通じない国で、半生半死で入院しなければならない身の上となる事が、どれほど不便で不安な事かが如実に描かれている。それに比べれば、今の自分なんか天国みたいなもんである。
 腹がくちたお陰で、少し感謝する気持ちになってきた。