朝から晩まで好きな時に好きなだけ寝ているせいで、夜中に眠れない。しかも絶食絶飲だもんだから、胃腹が減って仕方ない。オレはヒモジイと寝れない質なので、ヒジョ〜ウにツラい。せめて冷たいウーロン茶を好き放題飲めたら楽になるだろうに、それさえもダメなのだ。
 しかし、ここで無理は禁物である。ガダルカナル島から転進してきた兵隊が、夜中に炊事に忍び込んで食い物をサシクって食い、何人も頓死したという。衰弱した身体が受け付けなかったそうだ。まさか頓死するほど衰弱はしてないと思うが、イカンと言われている事をやって、人様に迷惑かける訳にはいかんのである。

 絶食3日目。生まれてこの方、こんなに長い間、飲み食いしなかった事はない。点滴はしているからオションションは出るものの、ウンコさんは全然出なくなった。詰まってる訳ではなくて、出す物が無くなったからなんじゃないかと思う。カチグソが出たら検便を出す様に言われてるが、食う物食わずに出せと言われても無理である。
 飲み食いしてないせいか、血圧が106/60くらいになった。これも驚異的である。普段なら140/90くらいはあるのだ。
 飲み食い出来ない事、寝るしか出来ない時に寝れない事はツラい。

 入院など物心ついて初めての体験だけに、勝手が判らない事が多い。目下困るのは、消灯後の時間の潰し方。消灯といっても完全に暗くなる訳ではないが、本を読むには暗い。スカっと寝れれば良いが、昼間好きなだけ寝てるだけに、全然寝れない。この病院では消灯後もテレビが見れる様だが、テレビなんぞは日頃から見ないから、ここでも見てない。本を読むために是非ヘッドライトが欲しいところである。

 昼間はかろうじて辛抱できる空腹が、夜はなかなか辛抱できない。退院したらアレ食おうコレ食おうの妄想で気をまぎらわせている。
 飯盒一杯に飯を炊いて、塩かけたり醤油かけたり、鰹節かけて食いたい。食パンにジャムとマーガリン挟んで食いたい。飯に味噌汁かけて食いたい。冷たいウーロン茶をガブ飲みしたい…。
 妄想と言っても、こんな貧乏くさい欲求しかないのだが、ウチに帰ればすぐ実現できる物ばかりだけに、欲求は切実だ。