たにし家の家訓の一つに「医者をコロコロ変えるな」というのがある。名医であれ藪医者であれ、掛かりつけた以上はまな板の上の鯉だから、治るまで通えという事である。その理由は、自分の思い通りにならんからといって余所の医者に行ったとしても、そんな無責任な患者は余所の医者も責任もって診ないからだ。下手をしたら診てくれさえもしない可能性がある。この様に躾けられて来たので、少々不満があっても、治療経過中に医者を変えた事はこれまで一度もない。また、そうするのに非常な抵抗を感じるのである。
 しかし、今の趣味を始めてから、横からヤイヤイと口を挟まれる事が多い。掛かっている医者に十分な信頼が置けている時は気にもしないのだが、今回みたいに説明不足で不信感を持った時などは、さすがの自分も心が揺らぐ。しかも今回は生まれて初めての骨折であるから、判らない事だらけである。そこで今回初めて、他の医者の診察も受ける事した。
 ところが、他の医者を見つけるのがまず難事であった。ウチの近所には整骨院が沢山あるのだが、その中で柔道整復師とかの資格を持ったところがあったので、まずそこに電話してみた。そして疑問をぶつけてみた。「折れた箇所が1ヵ月経ってもくっついている様に見えない事。また折れた箇所がずれて段違いになっている事」。
 するとこういう返事が来た。「普通は折れた骨を整復してから繋ぐのだが、整復してないなら、受傷から1ヵ月も経っている事なので仮骨が出来ている可能性がある。この場合、一旦折り直して繋ぎ直すしかないが、まずはまともな整形外科に診て貰った方がよい」との事。折り直してと聞いて、一気に気持ちが暗くなった。整復は確かにされてないので、今行っている病院はまともではないのか。いずれにせよ、そこでは診て貰えず、まずは整形外科にいけ、という事である。
 そこで、近所の整形外科に電話してみた。そこは一応は親身に話しを聞いてくれて、「手の専門医が居る南砂の医療センターを紹介する」と言ってくれたのだが、問題は今行っている医者とそこの提携病院が同じ順天堂病院である事。ついでにいえば、南砂の医療センターも順天堂系列だそうである。つまり、同じ病院内の余所の医者が横から変に口出ししたら、医者同士の関係がこじれてしまう、という事だった。自分にとっては一切関係ない話しではあるけど。
 こうなってくると、お先真っ暗感が大なのだが、嘆いてても仕方ない。次の整形外科を探してみると、いつも買い物にいくLIFEの隣にある事が判った。そして電話してみると、取り敢えず診てみない事には分からない、という答えだったので、ダメ元で行ってみた。そこでようやく診察を受けれたのだが、結果は「この程度のズレは仕方ない事でそのまま骨を着けて時間を掛けて元の位置に戻す。仮に無理に整復しても折れ口が斜めなので滑ってしまう可能性がある。この程度のズレであれば、神経や筋肉に影響を及ぼす事はあまりないと思われる。またギプスを手首から固定するのは、手首が動いたら骨折した部位も動いてしまうから。ここまで治したのなら、その医者に通い続けた方が良い」という答えだった。つまり、今の治療法が何ら間違ってないし、手首まで固定するのも理由があった、という事だ。
 自分が思ったのは、こうした説明を医者がちゃんとやってくれたら良いのに、という事だ。残念ながら、手首云々の説明は全然なかったのである。言葉足らずがどれだけ不信感を生むか、という事だ。
 しかし、いくら説明されても理解出来なかったり納得できない事もあるかもしれない。その場合は、こうやって他の医者に聞くのも手の一つだと思った。今回説明してくれた医者も、別にそこに転院する訳でもないのに、懇切に説明してくれたのは、患者のそうした事情を汲み取っての事だと思う。
 だが、一番注意しておく必要があるのは、外野の連中がアレコレ言う事に対して、過敏に反応しない事だ。結局、今回は連中が言ってた事は的外れだった訳である。タダ単に不安がらせただけに終わった。セカンドオピニオンは必要かつ重要としても、医者でもない連中の言う事はあまり気にしない方が得策である。たにし家の家訓はその部分においてこれからも活きるだろう。