「あぁ、生まれ変わるなら、ネコになりたい」今までに、何度叫んだセリフであろうか。身近な動物で、ネコくらい幸せそうな奴は見た事がない。どんな苦境にあろうとも、それを感じさせない動物。それがネコである。まぁ、中には見るからに悲惨な奴もいる訳ではあるが(例えば、近所のペルシャ猫の野良猫。あの手合いの長毛種のネコは、人に飼われなければどうにも見栄えがしない見本である)、それでも本猫はいたって平気な顔をして暮らしている。そうでない死にかかった奴は、人前に出てこない気の使いようだ。
 奴らには悩み事とかはないのだろうか。別にリストラされて明日からどうしよう、みたいな深刻な悩みでなくても、メシにありつけなくて腹ぺこだとか、ノミにたかられて体中が痒いとか、昨日の夜からビチビチだ、とかいう生理的な悩みくらいはあっても不思議はない。きっとあるに違いないだろう。でも顔に出さない。これが素晴らしいではないか。まさに「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」である。僕も常々そうありたい、と願っている訳であるが、元より人間としては皆目弱い為に、腹立つ事や嫌な事は直ぐ顔に出るし、いつまでもクヨクヨ悩んでいるのである。
 「猫は額が狭いから(前頭葉がほとんどないから)、悩みを感じる事がない」と言われる。でも、悩みを抱えるくらいなら、人間やっているよりもネコをやっている方が人生楽しそうだ。そんな訳で、事あるごとに(実は今日も事があった訳だが)ネコの脇を持って正面に抱き上げ、「なぁ、替わってくれへんか」と話しかける訳であるが、その態勢がイヤなのかもがいているばかりである。