少なくとも、この部屋ではバルサンは大してノミに効かない事が判った。かなり弱りはする様だが、完全に殲滅するには至らなかった。二日目になると、毒っ気が完全に抜けるのか、攻撃前と変わらぬ機動力を回復したのだ。使用したのは、対ノミ・ダニ用に強化された黄缶であったが、期待は大きく外れたのだった。
 しかし、意外に効果的だったのが、ガムテープ&コロコロ作戦だった。要するに、粘着テープを使ってノミを片っ端から捕まえていくのだが、すりつぶす手間も掛からず、しかも捕獲率98%と絶大な威力を発揮し、目に見えてノミの数を激減させる事に成功したのだ。バルサン攻撃を掛けたその日には、ノミ主力は健在で、粘着テープ攻撃の最中にも、勇敢なノミは逆襲に打って出て、腕の血を吸うなどの反撃があり、しかもオレが右側のノミを攻撃中に、左側に潜んだノミがオレの体にたかってくるとい、組織的?反撃があったりもしたのである。
 だが、執拗なテープ攻撃で一夜で百匹以上のノミが殲滅され、こうなってくるとさしものノミも、もはや組織的反撃など叶う筈もなく、戦いは掃討戦の段階に入った。それにしても、このノミは一体どこに隠れているのか、取っても取っても少しずつ現れて、隙あらば血吸ってやろうとカーペットの至る所に潜伏しているのである。百匹以上の損害を出したにも関わらず、今日も30匹前後のノミが片付けられたのだから、その勢力は追って知る由であろう。
 恐らく、これからもほぼ毎日、コロコロやガムテープを使った掃討作戦を続けねばならないであろう。ノミはカーペットの中で繁殖し、そのカーペットを簡単には交換出来ない以上、これはやむを得ない事である。それに対して、ネコの方はみるみる効果があった様で、ノミ櫛を使って見たら、3分の2以上が既に死骸になっていた。これは驚くべき事である。つまり、元々の発生源は原因が根絶されて、感染元の方が駆除が困難となったのだから。