■漫画「翔んで埼玉」 原作者・魔夜峰央さんに聞く 「県民の鷹揚さ、日本一」
2/10(日) 17:43 毎日新聞

 自分が新小岩から四街道に引っ越す時に読んだ記事が、おそらく引っ越しの決め手となった。そこにはこう書いてある。
四街道市(よつかいどうし)は千葉県に存在する日本のヨハネスブルグである。 四街道の名前は、「四方向から来た敵が独特な街道の構造上一点に集まったため、そこで一網打尽にして身ぐるみを剥いだ」という故事に由来している。
 ヨハネスブルグって、アパルトヘイト終了後、ガチで核戦争後の北斗の拳の世界になってしまった都市であるが、あの都市に比肩される街って、そうそう日本にはない。新小岩もたいがい柄の悪い街であるが、それでも平和に25年も暮らしてきた。実をいうと、あまりディスるところがなかった街だったのだ。
 さて、四街道に引っ越してきた。四街道といっても、アンサイクロペディアに書いてある通り、結構広い。「四街道のどこそこ」と言わなければ、どこに住んでいるか、まず分からないだろうと思う。個人情報保護の観点からすると、住んでる場所が見つけにくい良い街である。
 自分が知っている四街道市は、せいぜい自分が住んでいる佐倉との境目辺りと、四街道駅前(しかも北口)と物井駅の近辺くらいなものである。
 四街道の駅前というのが、これが結構昭和な感じで、自分が小学生だった昭和50年代くらいの雰囲気を醸し出している。コンビニやマクドがなければ、まんま昭和50年代である。駅舎も昭和な感じで、自動改札やエレベーターがむりやり21世紀である事を主張している感じなのだ。再開発の予定がないのか余地がないのか知らないが、JR福知山駅の方がよっぽどモダンな感じである。
 さて、日本のヨハネスブルグと称される四街道ではあるが、ヨハネスブルグに富裕層が住むサントン地区というのがあるように、四街道も標高の高いところは高級住宅地である。自分はそこの中古物件を買ったのであるが、建ってる家はどれもこれもデカイ金持ってそうな家ばかりである。ただし、これは昭和の時代に高級社員や経営者だった人が住んでた街、という意味であって、町民の98%が高齢者である。中にはお年を召されて施設に入られたのか、ずっと空き家の家もある。50メートル先のゴミ捨て場に、自転車の前かごにゴミ袋を載せて押して運ばなきゃならん様なお年寄りが大半なのだ。あと10年もしたら、間違いなくゴーストタウンになるに違いない。今だってジョルジョ・デ・キリコの絵みたいに人気のない街なのだ。
 しかし、そんな四街道(というか、実質的には佐倉みたいなもんだが)も、気に入っているところがある。それは空が広いのだ。本当に広い。道幅が広くて高層建築物がないからだろうか。新小岩の時の3倍は空が広いのだ。その広々とした空を見上げる時だけ、良い所に来たなぁ、と思う。その時だけ。
 あとは、夏はくっそ暑いし、窓開けたら細かい砂が飛んでくるし、冬は寒いし、近所にコンビニもないし、病院もスーパーも車使わないかんし、なにより通勤が前の倍以上になって毎日がハードである。つくづくエライとこに来たもんだと思う。広い空以外は。