■すき焼きに白菜はありかなしか 東西の有名店を取材してみた
(2015年10月18日 16:21  NEWSポストセブン)

 実家のオカンは、倅の自分が言うのもなんだが、料理が美味いと思う。少なくもと、きんぴらごぼう以外の物は、何が出ても大抵は美味かった。
 そんなオカンが、ある日、別に祝い事があった訳でもないのに、すき焼きをこしらえた。非常に美味かったのだが、このすき焼きには入ってないものがあった。それは、肉である。肉の入ってないすき焼きなど、すき焼きの味にならないと思いがちだが、とでもない。ちゃんとすき焼きの味だったのだ。
 作り方は、肉が入ってないだけで、あとは普通のすき焼きの作り方と同じである。関西だから、わりしたは使わず、砂糖と醤油で味をする。では、すき焼きの汁はどこから出て来るのか。それは白菜からなのだ。熱と醤油の浸透圧で白菜から水分が出て、すき焼きの汁になるのである。そして、すき焼きのあの味というのは、実は白菜の味なのである。ウソだと思うなら、試しに白菜を砂糖と醤油で煮てみるといい。すき焼きの味になるから。
 すき焼きに白菜を入れないのは、関東の店に多いらしい。そりゃそうだ、わりした使ってるから、白菜入れたら水っぽくなるのは当然だ。つか、わりした使ったすき焼きなんて、自分から言わせたらすき焼きでなく、牛鍋である。「ざん切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」あの時代に生まれた食べ物である。