土曜日。明け番の眠たい目を擦りこすり、池袋まで「シン・レッド・ライン」を見に行った。去年の「プライベート・ライアン」に引き続き、二本目の第二次大戦モノである。今度は日本軍相手という事で、仮想軍人タニー隊長はライアンの時よりも期待して見に行った。前評判では、敵役の日本兵はモノホンの日本人を使ったとか、その日本兵は結構強力に描かれているとか、とにかく期待させる内容だった。角川から出ている原作を読んだ(何を間違えたのか、下巻を先に買ってしまい、途方に暮れた)時は、何とも気まずい雰囲気で、さすが終戦間もない頃の、偏見に満ち溢れた内容だわい、と思っていた。だから、映画には大いに期待したのである。
 さて、ダラダラと映画評をする能も文章力もないので、直裁に結論を言う。はっきり言って、仮想軍人の視点からは、納得のイカン映画であった。我々の祖父達がガ島の、いつ、如何なる地点で、あの様な稚拙で無様な戦闘をしたのか。ライアンの時は、勝ちを進めた米軍も、負け込んだ独軍も、いずれの戦闘も大いに納得できる内容、つまり上手な戦闘をしていた。しかし、シン・レッド・ラインの戦闘は、納得できん。特に丘のトーチカを米兵が攻略するシーンは、どうにかならんのか。幾ら米兵が半自動火器を装備してるとは言え、一体いつ装弾したのか判らん様な戦闘は可笑しい。突入してくる日本兵を次々やっつけていたが、あの距離である。一組やっつけている間に反対側から突っ込まれていても不思議はないと思う。このトーチカの攻撃では、逃げ遅れた日本兵が何人か俘虜になったが、ガ島の頃の日本兵は動ける限り戦い、どうにもならなくなると自爆して自決する例の方が多かったという。あのトーチカの兵は、まだ全然元気であった。俘虜になってしまうのは少し違和感がある。
 もっと納得いかんのが、この後で日本軍の中隊の部落を攻撃するシーンで、両軍が激烈な白兵戦を展開するが、もう少し均等なシーン割りをしてもらいたかった。戦闘が始まる少し前の、両軍が着剣して身構えるシーンでは、日本兵の気魄はスクリーンを通して戦慄すべき戦意を溢れさせていた。それだけに余りにも米兵の活躍が目立つ白兵戦で、白けてしまった。所詮、アメリカ映画である。ちなみに、ガ島の戦闘で、米軍があの様な積極的な戦闘を実際に行ったのであろうか。米軍が白兵戦を自ら行うというのは、よくよくの事である。
 これ以外では、良く出来た映画だったと思う。特に、日本軍の兵器装備は実に良く再現されていた。九二式重機や九六式軽機もよく作動していたし、中隊の陣地には九七式曲射砲や九四式山砲?もあって、実に感動した。良く作ったものである。ラスト付近の日本軍の増援部隊が米兵を追いつめるシーンでは、九二式重機を膂力搬送していて、大いに感心した。そんな訳で、「プラトーン」に対する「ハンバーガー・ヒル」ほどの悪評ではないものの、もう少し頑張って欲しかった、と思う訳である。