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 この作品はたしか連載されている時に、一部だけ読んで(「一等星」の川村少年がコンビニで盗み食いするシーン)「最近、この手(育児放棄)の話し多いよなー」と思っただけで、その後忘れていた。たまたま古本屋で見つけて、手にとって立ち読みしたのが運の尽き。自分も滂沱の涙の一員になってしまった。映画化された、という話しも知ってはいたが、数多くある動物ものの映画だと思っていたのだが、まさかこんな話しだとは思わなかった。
 中身については多くの人が感想を述べているので、細々とした事は述べず、自分が感じた事だけ書くが、まず一つは「星守る犬」の「おとうさん」の執着のなさと、もう一つは「一等星」の少年「川村哲男」の生存力に驚いた。普通、全財産つまった財布が無くなったら大事で、盗った奴を探しまくると思うがそうもせず、それが決定的原因で「おとうさん」と犬のハッピーは死ぬ事になる。でも、その死んでしまう事自体にも執着がない。「川村哲男」は育児放棄されて、あまりの空腹にアチコチの店で盗みを働き(決まってコロネなのだが)、恩人の財布までも盗んで旅を続ける。当然の事ながら、盗みは犯罪であるし褒められた事ではないのだが、「どうにかして生きる」という強い意志(そんな風には描かれれていないが)を感じた。
 前者は何もかも失って最後は死ぬ話しだし、後者は生きんが為に手を汚す(しかも前者を死なす)話しであるにも関わらず、「救いがない話し」でないところが、この作品の救いなんだろうな、と思う。この作品で描かれている悲喜こもごもは、どんな人も大抵は経験してる事だし、あるいは経験する可能性のある事なので、自分を登場人物に投影しやすい。そして「救いのない話し」というのは、いつまでも自分の心の中に残っているのだけど、この作品を読む事でその思いが救われた気持ちになるんじゃないかな、という風に感じた。
 こんなに泣いたのは、3年前にくろすけが死んだ時以来である。泣かせる作品は良い作品である。